私はビスキュスmama

短編小説『私はビスキュスmama』の連載と日常ブログ

私はビスキュスmama #1

私はマダム・ビスキュスという名前の犬を飼っている。犬種はバセット フォーヴ ド ブリュターニュと言うフランスの犬

 

ほとんどの人が聞いたことが無いと思う

 

バゼットハウンドから色々と掛け合わせて生まれた犬種で、胴長短足だけど意外と筋肉質で俊足。バセットらしく垂れてる皮膚やタレ目な所もとても可愛らしい犬だ

 

 

そんなバセット フォーヴ ド ブリュターニュのマダム・ビスキュスは先日無事に1歳になった

私がビスキュスのママになって9カ月がたった事になる

 

 

私は普段家に居るので、基本ずっとビスキュスと一緒

 

友達も殆ど居ないし実家の家族とも離れているので、趣味もこれと言って無いし、毎日ぼーっとビスキュスとこの9カ月を過ごしてきた

 

 

 

そんなぼーっと生きてる日々の中でビスキュスを撫でていると

ふと、

「あれ…これ誰の手だ? …え、これ誰?」

 

その手はどこかのスクリーンを通して見ているかの様に、ビスキュスを撫でている自分の感覚から消えてしまうのだった

 

それはまるで

茶色い芝のような直毛の毛並みの整った犬を撫でている‘’別の誰か‘’

が、他に居るかのように…

 

 

しかしまた直ぐ次の瞬間には

「あ…これ、私か…。」と、また自分の手の感覚は戻って別の誰かは消えるのだった。

 

 

 

そんな不思議な瞬間がこの9カ月で何度も起きた。

未だにビスキュスを迎え入れた事が夢見心地で…とかでは無く、急に自分が自分でなくなり、私は自分を見失う

 

 

 

‘’私だけれど私ではない別の誰かのことを、私は客観的に見ている

しかし結局どちらも私…‘’

 

 

ただ、私ではない誰かは私の体でそれを見ているのは私の魂だろう

私はそこに居るが魂は体から離れ、離れた所から自分を見ているのだ

 

 

 

私の魂は自分の体を眺めながら、

 

 

ビスキュスを撫でている誰かの手…

いや、…私の手か…

私は今ビスキュスを撫でている

…ん。でもなぜ私はビスキュスを撫でているんだ?

……

あー、そっか。

私は今ビスキュスを飼っているんだった

そうだ、私は今ビスキュスのママなんだ

 

 

そう納得するとまた魂は私の体に戻ってくる

 

 

 

私の魂はたまに私がビスキュスのママである自分を認識出来なくなってしまうようだ

 

 

ビスキュスと居る私は私ではないと認識し、そうすると魂は体から離脱をする

 

 

ビスキュスを撫でているのは私だけど私ではない別の知らない誰か…

要するに知らない自分なのだ。

 

 

私の魂が知っているのはビスキュスを撫でている私ではなく、もっと別の私だ

 

 

 

 

 

アプリコット色のフワフワもこもこの毛

 

それを撫でている、私…

 

 

 

私が1年半前まで飼っていた愛犬、リリアンだ

 

 

 

そう、私の魂が認識しているのは

この”リリアンのママ”である私なのだ

 

 

 

 

 

今はビスキュスが可愛くてすごく大切な存在なのに間違いはない

 

 

毎日ビスキュスに癒されながら愛情いっぱいに育てているし、リリアンの代わりだと思った事も一度もない。

 

ビスキュスへはビスキュスにしかあげられない愛で接している

 

 

 

私はビスキュスのママだ。

 

 

 

しかしこの不思議な現象が起こるのは、私の魂はまだリリアンを失ったショックから癒えていないのであろう

 

だからたまに混乱して今の状況を見失い、体から離脱してしまうのだ

 

 

 

そう私はまだまだペットロスなのだ…

 

 

 

f:id:ukilili:20240420213440j:image

 

 

 

 

 

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村