私はビスキュスmama

最愛の愛犬を亡くした主人公の物語である短編小説『私はビスキュスmama』の連載と日常ブログ

私はビスキュスmama #3

ビスキュスは家から4時間離れた小さな村のブリーダーから引き取った

 

母犬、父犬、兄犬、そしてビスキュスがそこには居た。

 

 

私は初めて一つの庭で犬の家族がみんなで戯れている光景を見た

 

 

それは何とも言えない平和に満ちた素敵な絵だった。

 

 

 

‘’犬の世界は平和に満ちている‘’

 

 

 

と何かで聞いたことがあるが、

それをまさに目の当たりにした瞬間であった。

 

 

 

そんな平和に包まれた犬の世界から、私は今

遠く離れた沢山の人間の居る、しがらみや黒い感情もたくさんある私たちの世界へ

ビスキュスを一人連れ去ろうとしている。

可哀そうではないのか…?

 

 

私は家族と芝生の上を無邪気に走り回るビスキュスを見て自問自答していた

 

ただ私は決心していた。

 

 

 

 

 

私には愛犬と言う存在が必要だった

 

私はリリアンを亡くした喪失感から、愛犬の存在なしでは生活出来ない人間になってしまっていた

 

 

リリアンとの生活があまりにも幸せに満ちていたから…

その暮らしがいかに幸せか、知っているから

 

 

犬の助けが必要だったのだ。

 

しかし喪失感にくれている私には、犬を飼うなんて言う体力なんてまるで無かった

 

 

 

新しい犬を幸せにする自信が無かった

 

 

 

そんな精神状態で過ごしていると、ある時知人にポツリと言われた

 

‘’最初から犬を幸せにしなきゃとプレッシャーを感じてるのが大きな間違い。犬の方が君を幸せにしてくれる。体力が無いからなんて言わず、勇気を出して迎えれば良い。その子がきっとあなたをまた元気にしてくれる。

そうしたらそこから全力で頑張れば良い。‘’

 

 

そう、私たち人間が犬を幸せにするなんて上から目線も良いところ

 

犬達が私たち人間を幸せにしてくれるのだ

 

 

 

それに気づいてから、少しづつ保護犬のサイトや掲示板をネットで見始めたのだった

 

 

始めは保護犬を迎えようと思っていた

 

リリアンを飼っていたころから動物保護に関心があり、自分も何か少しでも力になりたいと思っていたから

お家が必要ない子を一匹でも助けられたらと言う思いがあったからだ

 

 

しかし何件か問い合わせをした所で、結局どれも譲渡には行きつけなかった

 

 

 

 

そんな進展も何もなく半分諦めかける中、それでもサイトを見続けていた私は

ある子犬の写真に目を奪われたのであった

 

それが子犬であるビスキュスだ

 

保護犬譲渡用サイトで新しい子犬の家族を探す、ブリーダーの記事だ

 

 

私はあっという間に夢中になった

 

 

…ただ

聞いたこともない犬種…

うちは小型犬しか飼えないけど…

どういう性格の犬種だろう…

 

 

不安はある中、夢中になっている私の思いはビスキュスへ一直線だった

 

 

 

直ぐにブリーダーに電話をすると、

聞きたかった犬種や大きさの問題もクリア。飼い主の条件にも一致していると言う事で実際に一度、子犬を見させてもらえる事になったのだ

 

嬉しかった

 

ただただ抜け殻の様に生きる生活から救われる…

私には一筋の光に見えていた

 

 

 

しかし…

 

 

リリアンを失って10カ月

 

今私は、リリアン以外の犬のママになろうとしている…

 

 

 

こんな事、許されるか。私とリリアンの絆が消えてしまうんではないか

 

 

 

一筋の光に希望を持ちつつも、どこか不安な自分が居た

 

 

 

 

 

前日の夜はそんな事で頭がいっぱいで眠れなかった

 

しかし不思議と目はスッキリ覚めていた

 

アドレナリンのお陰だろう

 

 

 

私は早朝にビスキュスの暮らす小さな村に向けて出発した

 

 

私はひたすら4時間の距離を走り続けた

 

運転する車内で、私はひたすらと

‘’子犬を見た瞬間に色んな感情が溢れ泣いてしまうんぢゃないか…。本当に新しい犬を迎えて大丈夫なのか…

崩れてしまうようならそこでまだ断る事も出来る……‘’

と、永遠に考えているのであった

 

 

 

 

しかし到着すると私は予想と全く違った感情に直面したのだ

 

 

楽しそうに戯れる犬の家族。それはとても穏やかで幸せな空気に包まれていた。

 

直ぐに私に気が付いた一匹の子犬が私の元へ駆け寄ってきた

 

 

ビスキュスだ

 

 

 

私の不安を消し去るかのように、勢い良く子犬のビスキュスは私の元へ駆け寄ってきたのだ

 

パタパタと子犬らしい足取りで、兄犬に負けまいと思いっきり私の元へ飛び込んできた

 

 

 

あの時のビスキュスの表情は忘れない。

 

 

どこか少し不安そうな眼差しのビスキュス

 

おそらく生まれて初めて知らない人間の元へ走り寄ったのだろう

 

 

それは子犬のビスキュスにとっては、ただの

どっちが先に辿り着けるか、‘’兄犬とのかけっこ‘’だったのかもしれない

 

 

ただそんな不安を感じながらも、勇気を出して走り寄って来てくれたビスキュスに

私はすでに心を奪われていた

 

 

 

不安を抱えている自分とビスキュスが重なってみえた

 

この子は私を幸せにしてくれる。私はこのこを幸せにする。

 

この犬の家族から引き離してしまうけど、その分もっと幸せにする。

 

 

 

そう決心した私は、

ビスキュスのママになったのであった

 


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